
1957年の作品でSFの名作といわれる小説で、2度ほど映画化もされている。新訳版を読んだ。500ページ弱でそこそこ長い。SFといっても純文学のような印象。終盤はページを捲るのが重かった。
ざっくりしたあらすじは、アメリカやユーラシアの北半球は核爆弾で崩壊した。その影響でもう間もなく汚染され滅びるのを待つオーストラリアでの物語。
街は大きく崩壊し始めているのだが人々は暴力や略奪に走るではなく、終わりが来る世界で穏やかに暮らす姿勢に人としての気高さを感じる。
感情をむき出しにするでもなく、人を蹴落とすでもなく、無駄に騒ぐでもなく、特殊な状況にあるお互いを想い、自由に過ごす。人それぞれができること、やってみたいことに挑戦する姿に、生きてることを感じる。
物語の終わりが近くなり心は大きくざわつき、振り返れば悲しみと黄昏の中だからこそこの物語が淡々と進んできたことに大きな深みを感じる。
正解はみえないものを大人は自分で決めていく、日々の経験や学び、熟慮がその決断へ導くものなのだろうと思った。
この物語はいつかははっきりしないけど確実に終わりが来る状態だ、それはいろんなことに喩えられる。わかりやすく特殊な設定になっているけど、基本的には今の我々も同じであろう。